石のおはなし-4 石の等級/製品になれない石たち

近年、石を採っている山(「丁場」といいます)というのは、かなり大規模な岩盤を有する山がほとんどです。
(土を掘り返していると石が出てくるというような山では採算が合わなくなっているからです。)
辺り一面迫力のある巨大な岩盤から石は切り出されています。
その量たるや計り知れないほどです。
しかし、その採った石がすべて製品向けに使えるかと言えば、そうではありません。

断層によるキズ、色合い石目合いの不良、硬さなど性質の不良によって、多くの石が使い物になりません。

時には、目に見えている層全部が使えない事もあります。
しかし使えない事がわかっていても、その石を除去してしまわないと、次の採掘に進めませんから、売り物にならない石の採掘撤去も避けて通れないことになります。
そしてその先に良い石の層が有るかどうかも、自然が作り出した石ゆえに、わかりません。
いくら機材が発達していると言えども、数十トン数百トンそれ以上の石を、穴明けしたり割ったり動かしたりすることは非常に過酷な重労働です。

丁場職人の技と苦労を経た結果、平均的に、採掘したうち出荷へとまわる事ができる原石は20~30%ぐらいだと思います。
丁場によってはもっと低いものも多く有ります。
このように、少しの合格品しか世に出ることができないのです。

天然の石は、厳密に言うと、同じ色・同じ模様のものが有りません。
1つの山から採れる石でも微妙に石目や色が異なるのは当たり前のことで、実際にはもっと変化に富んで、数メートル離れただけで異なることもごく頻繁にあります。

こういった事から流通する原石には等級が存在し、もちろん高い等級ほど高値がつきます。

概ね、用途として、最高等級は、先祖の魂を宿し心穏やかに手を合わせるお墓用になります。
墓石用を頂点に、次の等級は墓所周辺の石材や建築用材や彫刻向けになり、低級のものは、石崖用や庭園用などになります。

但し、最高等級の石がお墓用だと言っても、お墓はすべて最高等級を使っているという意味ではありません。
安価な墓石製品を実現するため、中級程度の石がお墓に使われることはよくあります。
その他、建築や彫刻であっても最高等級を使うこともありますので、必ずといったことではありません。

さらに、原石として流通したものがすべて製品となれるかと言えば、そこでもまた欠点が見つかれば使えないという事は起こります。
工場で、切削や研磨など加工をしている時、中に潜むキズが出てきたり、帯模様や玉模様などが出てきて、使い物にならないという事例です。
加工上、剔り込んで取り去れる部分や底部分など見えない所に模様の悪い部分は回す工夫をしますが、六面体の2~3面にそれらが出てくればどうしようもありません。
また、ひび割れキズは有れば全く使用不能です。
ですから、多くの面が目に晒される立体、さらに石の目・模様がはっきり出る磨きの仕上げが最も苦労する形態になり、それがまさに墓石製品です。
建築用で板材となって見える部分が少なかったり、彫刻のように叩き・削りの仕上げであればそこまでの石目の苦労はありません。

このように採掘時にも加工時にも使えない石が出てきますので、墓石で言えば、山で採掘されてから最終製品になれるのは、わずか1~15%程度になります。

仕方の無いことですが普通、一般の方が目にする完成した石製品は、その状態が当たり前に見えてしまいます。
しかし、その影で大量の製品に成れない石が存在するという事を知っていただければ幸いです。